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く力を衰えさせないために脚筋トレーニングをスタート
脚筋アップ・膝痛予防の筋トレ法
(監修:田中尚喜先生)

田中尚喜(たなか なおき)先生

田中尚喜先生にお聞きしました。

「歩く力」に直結する脚の筋肉ですが、日常生活であまり歩かなかったり、入院生活が長かったりする場合、当然のことながら衰えてしまいます。脚の筋肉は数多くありますが、中高年から鍛えたい筋肉にターゲットを絞って、効果的なトレーニングを行いましょう。

「年齢を無視しないトレーニングが効果的」

脚力はどうして衰えるの?

目標を決めてトレーニング

日頃、デスクワークが中心だったり、車や電車での移動が中心だったりして歩く時間が少ないと、脚力はだんだん衰えてきます。またたとえよく歩く生活をしていても、「膝を伸ばさないで歩く」「悪い姿勢で歩く」「重心移動が下手な歩き方で歩く」などのまちがった歩き方をしていると、脚力は衰えます。さらに中高年以降になると、脚の内側の筋肉が弱くなり、膝痛の原因になります。すると、歩くことがおっくうになって歩かなくなり、ますます筋肉が衰えるという悪循環になりかねません。100歳になっても元気に歩くために、脚の筋肉を鍛えることを意識しましょう。

カイゼン

鍛えたい脚筋は5つと多め。年齢や症状に応じたトレーニングを

目標を決めてトレーニング

数ある脚筋のなかでも、中高年からのトレーニングで大切なのは「内転筋」「大腿四頭筋」「ハムストリングス」「ヒラメ筋」、そして股関節の筋肉の「腸腰筋」です。たとえば「大腿四頭筋」は外側の外側広筋ではなく、中高年以降弱くなりやすい「内側広筋」を鍛えましょう。また膝が曲がる、股関節がゆがんだ状態になりやすい85歳以上の「超高齢者」の方が歩く力を維持するためには「ハムストリングス」を鍛えることが有効です。年齢や状況に合わせて必要な筋肉を鍛えることを意識してください

脚筋の種類 役 割 衰えると起こりやすい症状
内転筋 内ももの筋肉。脚を内側に引き寄せることで働き、片足で立つときは骨盤を安定させることに働く。 膝のお皿が不安定になり慢性膝痛・慢性腰痛の原因に。また特に女性で内ももが太くなったら要注意。歩幅が狭くなり20~30代の人と一緒に歩くとついていけないと感じるほど歩くのが遅くなった場合、内転筋の弱体化が原因。
大腿四頭筋 太ももの前面を包む4つの筋肉からなり、歩くときや階段を上がるときに膝折れを防ぐように働き、階段を上るときに体を上に押し上げる。 膝の屈伸力が低下し、慢性膝痛・慢性腰痛の原因になる。また大腿四頭筋をはじめとする脚筋の低下は血流の悪化や、冷え性、むくみの原因にもなる。
ハムストリングス 太ももの裏側にある3つの筋肉からなり、走ったり歩いたりする時のアクセルの役目をし、膝を曲げる、股関節を伸ばす際に働く。 膝の屈伸力が低下し、慢性膝痛・慢性腰痛の原因に。また歩くスピードも低下する。逆にこの筋肉を鍛えることで、膝や股関節が曲がった高齢者でも前に出した足を支点にして体を引き寄せるような歩き方が維持できる。
ヒラメ筋 アキレス腱とつながるふくらはぎの奥にある筋肉。歩くとき最後に地面を押し出す役目があり、重心を前に送る歩行の動作に不可欠。 地面を蹴る力が弱くなり、歩く際に膝関節に無理がかかり膝痛を起こしやすくなる。歩くスピードも低下。また脚筋が弱まって正しく歩けなくなると外反母趾になりやすいが、ヒラメ筋や内転筋を鍛えると予防効果がある。
腸腰筋 股関節の可動域に関係し、骨盤の腸骨から始まる腸骨筋と、腰椎から起きる大腰筋がある。直立した時に上半身が倒れないよう背骨の前から支える。 股関節の動きが悪くなり、腰が曲がった状態に。そのまま放置していると、上体を伸ばそうとするあまり膝が曲がり、腰痛や膝痛の原因になる。
脚筋アップ・膝痛予防の筋トレ法

脚筋アップ・膝痛予防の筋トレ法

どうして中高年以降は膝痛になりやすいの?

ひざ痛

膝痛で多い症状が「膝の内側が痛い」というもの。これは歩くときに膝が伸びない状態で、膝を曲げたまま歩いていることが大きな原因です。また中高年以降は、大腿四頭筋の内側にある内側広筋が弱くなります。これにより膝関節が不安定になり、膝痛の原因になります。こうした膝痛の多くは、膝の内側の軟骨が段階的にすり減っていく「変形性膝関節症」です。これを放っておくと膝関節の変形が進み、O脚が進行し、痛みも増してくる恐れがあります

カイゼン

膝痛予防や歩く力を維持するために脚の筋肉を鍛えましょう。

進行する膝痛に対しては、大腿四頭筋や内転筋をはじめとするすべての脚筋の衰えが影響します。膝痛が深刻になる前に、これらの筋肉を鍛えることが効果的です。また脚筋が衰えると正しく歩くことができなくなり、歩く力がますます弱まってしまいます。今回は、膝痛対策や正しく歩く力を保つ筋肉トレーニングのなかでも、「内転筋」「ハムストリングス」「腸腰筋」の3つの筋肉トレーニングを紹介します。

次に紹介するトレーニングで、脚力を強化し、歩く力をキープ

カイゼン体操①

内転筋を鍛えるトレーニング

内転筋を鍛えるトレーニング

まっすぐ立った姿勢にして足を開き、膝頭のあたりで硬めの枕、クッション、2つ折りにした座布団のいずれかをはさんで、そのまま内ももにギューッと力を入れて3秒キープする。これを3~5回繰り返す。

体操のポイント

膝を正面に向けた姿勢にして枕やクッションをはさんでください。このトレーニングは、膝痛があって歩行能力が低下しかけたときにも有効です。

カイゼン体操②

ハムストリングスのトレーニング

ハムストリングスのトレーニング

立った姿勢で、ベッドの下の部分など、50cmくらいの高さのところに足首の後面をひっかけ、脚で持ち上げる感じで力を入れて5秒キープする。これを3~5回繰り返す。

体操のポイント

ベッドに押し付けた足首に力を入れたとき、ハムストリングスに意識して力が入るようにしてください。安全のため壁などに手をついて行ってください。

カイゼン体操③

腸腰筋のトレーニング

腸腰筋のトレーニング

椅子に座り膝に手を置いてももを上に上げながら、片手で上から膝を押す。ももは手で押す力に抵抗するようにしながら3秒キープする。これを片足ずつ5回繰り返す。

体操のポイント

腸腰筋に意識を集中させ、手で押す力とももを上げる力はどちらも強すぎないように同程度の力をかけます。

【まとめ】
日頃歩く機会が少なかったり、正しい歩き方ができていないと、脚力は衰えます。また中高年以降は脚筋の衰えで膝痛も起こりやすくなり、早めの対策が必要です。脚力の維持や膝痛予防のためには「内転筋」「ハムストリングス」「腸腰筋」などのトレーニングが有効です。

イラスト/本田葉子