

基本的な姿勢と歩き方を見直そう
「間違った歩き方」「正しい歩き方」とは?
(監修:田中尚喜先生)


田中尚喜先生にお聞きしました。
100歳まで自分の足で歩くためには、体を支える筋肉が必要です。特別なトレーニングをしなくても、日常的な立つ、歩くなどの動きを正しくするだけで長寿体質の筋肉が作れます。筋肉がつけば、代謝もよくなり、肥満を防ぎ健康な体になります。
「姿勢と歩き方がよくなるだけでこんなに変わる!」
なぜ姿勢がくずれるのでしょうか。

中高年の姿勢のくずれで目立つのは「前傾姿勢」、いわゆる「猫背」。猫背は、背筋や胸筋が縮んでしまったために起こります。一方、猫背とは対照的な「反った姿勢」も、間違った姿勢。原因は、腰の筋肉が縮んでおなかが突き出てしまうためです。さらに、中年以降は足裏のアーチ(土踏まずの部分)が下がって、姿勢を保ちにくくなる傾向があります。
こうした姿勢のくずれが起こると、立つだけで疲れてしまい、長時間立っていられなくなります。

「正しい立ち方」を、日々実践。

「正しい立ち方」を実践するだけで立つための筋肉が鍛えられます。ポイントは「おしりの筋肉である大殿筋を意識し、肛門を締めて立つ」こと。肩に力を入れず、下腹に力を入れて立つよう心掛けてください。これだけで曲がっていた背中や膝が伸び、後ろに落ち込んでいた腰が持ち上がります。背中が伸びれば胸もまっすぐになり、アゴも引けます。いくつになっても若々しい姿勢を維持できます。

「間違った歩き方」「正しい歩き方」とは?
間違った歩き方をつづけると…?

「歩くとすぐ疲れる」という人は要注意。歩く時間が減ったため、筋肉が衰えてしまった可能性があります。また大股で膝を曲げ、背中を丸めて歩くクセがある人も、疲れやすくなります。腕を振りすぎている人は、歩くことで背中の痛みを引き起こしているでしょう。間違った歩き方により、疲れやすく、さらに歩かなくなるという悪循環に陥ってしまいます。

間違った歩き方を、より良く改善しましょう。
間違った歩き方 | 原因 | 改善法 |
---|---|---|
膝を曲げたままの歩き方 | 前傾姿勢や歩幅が広すぎる | 「前傾姿勢を調整する体操」をする |
上体を左右に大きく振る歩き方 | お尻の筋肉(大臀筋の低下) | 「正しい立ち方」や「後ろ歩き体操」をしてお尻の筋肉を鍛える |
必要以上に足を持ち上げる歩き方 | 母指でしっかり地面をけらず足の裏で地面を押している | 「後ろ歩き体操」で改善する |
次に紹介する正しい歩き方と、正しい歩き方をするための体操を実践してください。
カイゼン体操①

正しい歩き方をマスター
正しく歩くために、まず正しく立ちます。歩き出す際、前足はかかとからつき、後ろ足は母趾(足の親指)でしっかり蹴りだすことを意識してください。これだけで自然と背筋が伸び、膝が伸び、疲れない歩きが実現します。
カイゼン体操②

前傾姿勢を調整する体操
まずは、前傾姿勢チェック
壁を背にするように背筋を伸ばして立ち、お尻を壁につけて立つ。上半身が壁についていれば大丈夫。壁からの距離が離れているほど、普段の生活でも歩いているときも前傾姿勢になっている。

① 壁に対して90度の角度で横向きになり、肩から腕にかけて壁につける。
② 肩と腕はそのままでできる限り壁から体を離し、20~30秒キープ。
★前傾姿勢が長く続くと、上半身の左右どちらかにねじれが生じます。そのため、この体操はねじれた片側だけで行います。両方の腕で試し、よりきつく感じるほうで行ってください。
カイゼン体操③

後ろ歩き体操
正しく歩くためには、かかとから足の親指へのスムーズな重心移動が不可欠です。重心移動は、無意識でやっていることですが必要以上に足を持ち上げる歩き方をしている人は要注意。後ろ歩き体操で歩行時の正しい重心移動に必要なおしりの筋肉(大臀筋)やふくらはぎのヒラメ筋が効率よく鍛えられます。

① しっかりと立つ。
② 大股で足を後ろに引き、膝を伸ばしてつま先から着地。太もも、お尻に力が入っていることを意識してゆっくり体重移動する。
★裸足でも靴をはいたままでもOK。1日1分くらいの後ろ歩きを10回ほど行う。O脚の矯正効果も期待できます。
【まとめ】
普段の姿勢、歩き方に気をつけることで、正しい筋肉を作ることができます。また、毎日の習慣として、「歩く」ことの大切さが注目されています。さあ、健康寿命の延伸へ。
イラスト/本田葉子